30秒でわかるこの記事のポイント
- 店舗からの一次相談(返品、お客様への対応、発注の迷いなど)は、AI社員が対応の案を出す形で任せることが考えられる
- 店長の判断は「どこまで店舗で決めてよいか」「どんなときに本部へ上げるか」を問いの形で取り出す
- 本部へ上げる基準に当てはまるものは、本部の担当者に回す境界にする
- RAGに判断を載せる部分はお客様ごとの構築で、既製の機能ではない。最終判断は人に残す
小売やサービスの店舗では、スタッフから「これはどう対応すればよいですか」という相談が、店長や本部に集中している場合を想定します。返品の可否、お客様へのお詫びの仕方、発注数の迷いなどが、その例です。この一次相談をAI社員に任せるとしたら、店長の判断をどこまで引き継げるのか。この記事では、その考え方を整理します。
なお、本文中の場面は、一般的な利用イメージとして「例えば」の形で書いたものです。実在の企業や事例ではありません。
§ 一次相談で、AI社員に任せるタスク
Kneweava AI社員は、これまで人が行っていたタスクをAIが自動で担う「AI社員」を、お客様の業務に合わせて構築し、定着まで伴走するサービスです。店舗運営の一次相談を例にすると、任せるタスクは次のようになります。
- 店舗からの相談(返品、お客様への対応、発注の迷いなど)を受け付ける
- 過去の対応を調べる
- 対応の案をつくる
AI社員が出すのは、あくまで「対応の案」です。お客様への最終的な対応や、例外の承認は、人が行います。
§ 店長の判断は、なぜ引き継ぎにくいのか
店舗運営の相談には、マニュアルだけでは答えられないものがあります。例えば、次のような場面です。
- 購入から日数が経った商品の返品を求められた
- お客様が強く不満を訴えている
- 発注数に迷っているが、天候や近隣の予定も気になる
こうした場面で、店長は「ここまでは店舗で対応してよい」「これは本部に確認しよう」と判断しています。その線引きが明文化されていない場合は、判断の基準を言葉にするところから始めます。
手順の自動化だけでは、自社の判断基準を扱えない場面があります。そこで、店長や本部の判断を取り出し、出典つきでRAGに格納して、AI社員が参照できるようにします。
§ 判断を取り出す問い:ACTAの着眼点
判断の取り出しには、ACTA(応用認知的タスク分析)の考え方を使います。「何に着目し、どう見分け、どちらを選ぶか」を、具体的な問いの形でうかがいます。店舗運営の一次相談では、例えば次のような問いが考えられます。
§ 何に着目しているか
- 相談を受けたとき、最初に確認することは何ですか?
- お客様の状況のうち、対応を左右するのはどの点ですか?
- 相談の文面から、「急ぎ」や「慎重に」を読み取る手がかりはありますか?
§ どう見分けているか
- 「店舗で決めてよいもの」と「本部に上げるもの」は、何の違いで分かれますか?
- 同じ返品の相談でも、対応を変えたことはありますか?そのとき、何が違いましたか?
- 新人スタッフが判断を誤りやすいのは、どんな場面ですか?
§ どちらを選ぶか
- 迷ったとき、店舗で対応する側と、本部に上げる側の、どちらに倒すことが多いですか?
- 本部に上げるとき、どんな情報を添えると話が早いですか?
- 店舗で対応したあと、本部に共有するのは、どんなときですか?
問いは、過去の具体的な対応を思い出してもらう形にすると答えやすくなります。実際の問いは、業態や店舗の規模、本部との関係に合わせて組み替えます。
§ 引き継げる判断と、引き継ぎにくい判断
店長の判断のすべてを、同じ形で引き継げるとは限りません。整理すると、次のように分けて考えられます。
- 引き継ぎやすい判断:「この条件なら店舗で対応する」「この条件なら本部へ上げる」のように、条件と選択が言葉にできるもの。過去の対応と、その理由があるもの
- 引き継ぎにくい判断:お客様の表情や場の空気を見て決めるもの、前例のないケース、店舗や会社の方針に関わるもの
引き継ぎにくい判断は、無理にAI社員へ載せず、人に返す境界として扱います。引き継げる範囲が少しずつ見えてくること自体も、取り出す作業の成果です。
§ 本部へ上げる境界を、先に決める
最終判断は人に残します。AI社員は対応の案と根拠を出し、判断できない境界は人に返します。店舗運営の一次相談では、本部へ上げる基準に当てはまるものは、本部の担当者に回す、という境界が考えられます。
基準は、運用しながら見直します。店長や本部が直した判断をRAGに足していくことで、AI社員が一次対応できる範囲を、少しずつ整えていく進め方です。出典がついているため、AI社員が案を出したときに、どの判断が根拠になっているかを人が確かめられます。判断を直せば、AI社員の振る舞いも直る設計です。
また、店長の判断を言葉にする作業は、新しい店長やスタッフが対応を学ぶ材料にもなります。判断を次の人へつなぐ考え方は技能継承、判断に根拠を持たせる考え方は根拠ある判断でも紹介しています。
§ 当社の運用と、お客様ごとの構築について
正直にお伝えすると、Data Insightが運用しているAIマーケティング社員は、RAGを使っていません。手順と品質ゲートだけで動いています。ここで書いた「店長や本部の判断をRAGに載せてAI社員が参照する」部分は、当社の運用の紹介ではなく、お客様の業務に合わせて構築する内容です。
人の判断をRAGに格納し、AI社員が参照する部分は、お客様ごとに構築するもので、既製の機能としてお約束するものではありません。
§ よくある質問
§ Q1. 店長ごとに判断が違う場合は、どうなりますか?
違いそのものも、取り出す対象になります。なぜ違うのかをうかがい、会社として揃えるべきところと、店舗の裁量に任せるところを、本部と一緒に整理します。どちらを採るかは、人が決めます。
§ Q2. お客様への返答を、AI社員がそのまま送るのですか?
いいえ。AI社員が出すのは、スタッフが使う対応の案です。お客様への対応は、人が確認したうえで行う設計を想定しています。どこまで任せるかは、業務ごとに一緒に決めます。
§ Q3. まず何から始めればよいですか?
最初から全店に広げず、1つの業務で確かめる進め方をおすすめしています。限定検証では、実際の相談を題材に確かめてから広げることができます。
§ まとめ
店舗運営の一次相談をAI社員に任せるときは、「任せるタスク」「参照する人の判断」「人に返す境界」の3点を決めます。店長の判断は、「何に着目し、どう見分け、どちらを選ぶか」を問いの形でうかがうことで、引き継げる部分と引き継ぎにくい部分が見えてきます。本部へ上げる基準に当てはまるものは、人に返します。