30秒でわかるこの記事のポイント
- Chatflowは「記憶を持つ対話」を実現する、Difyのチャットボット構築機能
- 会話変数とメモリ機能で、前回の文脈を踏まえた自然な対話が可能に
- ストリーミング表示やHTMLメッセージの活用で、ユーザー体験を向上できる
AIチャットボットを業務に導入しようとしたとき、こんな経験はありませんか?
「さっき言ったことを覚えていない」「毎回、同じ前提を説明し直さなければならない」「まるで初対面の相手と話しているようだ」……。
実は、これは多くのAIチャットボットに共通する課題です。一問一答のやり取りはできても、会話の「流れ」を理解して対話を続けることは、想像以上に難しいのです。
DifyのChatflow機能は、まさにこの課題を解決するために設計されています。この記事では、社内QAやカスタマーサポートへの対話型AI導入を検討している担当者・開発者に向けて、Chatflowの仕組みと設計の考え方を解説します。
Data Insightでは、AIを単なる効率化ツールではなく、人間の創造性を支援し、共に対話するパートナーとして定義しています。Chatflowは、そのような「人間らしい対話」を実現するための基盤です。
§ 1. Chatflowとは ─ Workflowとの根本的な違い
§ Workflowは「記憶を持たない」処理
まず、DifyにおけるWorkflowとChatflowの違いを理解しましょう。
Workflowは、入力を受け取り、処理し、結果を返す「1回で完結する」仕組みです。例えば、文章を要約したり、データを変換したりする用途に適しています。各実行は独立しており、前回の処理内容を記憶していません。
§ Chatflowは「記憶を持つ」対話
一方、Chatflowは会話の文脈を記憶し、複数回のやり取り(マルチターン対話)を通じて対話を続けることができます。
例えば、以下のような会話が可能になります:
- ユーザー:「東京のオフィスの住所を教えて」
- AI:「東京オフィスは〇〇区にあります」
- ユーザー:「そこへの行き方は?」
- AI:「東京オフィスへの行き方ですね。最寄り駅は…」
2回目の質問で「そこ」と言っただけでも、AIは前の文脈から「東京オフィス」を指していると理解できます。これがChatflowの本質です。
§ 「普通のチャットボットと何が違うの?」
よくある質問ですが、答えは明確です。一般的なチャットボットの多くは、一問一答の応答ルールを設定しているだけです。対してChatflowは、会話の履歴を理解し、文脈に沿った回答を生成できる点が根本的に異なります。
§ 2. 会話のコンテキスト管理 ─ 「記憶」の仕組み
Chatflowが「記憶」を持つ理由は、2つの仕組みによって支えられています。
§ メモリ機能:過去の会話履歴を自動で保持
Chatflowにはメモリ機能が組み込まれています。これは、過去の会話履歴を自動的にプロンプト(AIへの指示文)に注入する仕組みです。
具体的な実装は、LLMノード内の「会話の履歴(Context)」設定で行います。ここで「Window サイズ」を指定でき、例えば「直近10ターン分の会話を記憶する」と設定すれば、それ以前の古い会話は自動的に破棄され、トークン(AI処理の単位)を節約しながら文脈を維持できます。
この仕組みにより、長時間の対話でも「さっき言ったこと」を踏まえた応答が可能になります。
§ 会話変数(Conversation Variables):永続的な情報の保持
メモリが「直近の会話履歴」を扱うのに対し、会話変数は「会話全体を通じて永続的に保持したい情報」を管理します。
例えば、以下のような情報を会話変数として保存できます:
- ユーザーの名前
- ユーザーが伝えた予算や条件
- これまでの提案回数
- ユーザーの選好(例:「シンプルな回答を好む」)
会話変数は、対話の途中で更新することも可能です。これにより、「ユーザーが予算を変更した」「新しい条件が追加された」といった状況変化にも対応できます。
§ Variable Assigner ノード:会話変数の読み書き
会話変数の読み書きを行うのがVariable Assigner ノードです。
このノードを使えば、対話の中で「ユーザーの名前を変数に保存する」「保存された予算を回答に反映する」といった処理を視覚的に設計できます。プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップで設定可能です。
§ 3. マルチターン対話の設計
Chatflowでは、ターン(やり取りの往復)ごとにフローが実行されます。この仕組みを活用すると、対話の段階に応じた処理を設計できます。
§ sys.dialogue_count で会話の段階を判断
Difyにはsys.dialogue_countというシステム変数があります。これは「現在何ターン目か」を示す数値です。
この変数を条件分岐に使うことで、以下のような設計が可能になります:
- 1ターン目(初回):挨拶と自己紹介、ユーザーの目的をヒアリング
- 2ターン目以降:本題に入り、具体的な回答や提案を提供
- 5ターン目以降:必要に応じて、これまでの会話を要約して確認
これにより、単調な応答の繰り返しではなく、対話の「流れ」を設計できるようになります。
§ その他のシステム変数
Chatflowでは、dialogue_count以外にも便利なシステム変数が用意されています:
- sys.query:ユーザーの直前の発言(入力文)
- sys.conversation_id:会話ごとのユニークID(ログ管理に活用)
- sys.user_id:ユーザーの識別子(ログイン連携時に使用)
これらを組み合わせることで、より高度な対話フローを構築できます。
§ 4. Answer ノードとUI表現
§ Chatflow専用の「Answer ノード」
Workflowでは処理の最後に「End ノード」を使いますが、ChatflowではAnswer ノードを使用します。
Answer ノードの特徴は、対話の途中で複数回使用できる点です。例えば、長い処理の途中で「少々お待ちください」と表示したり、段階的に情報を提示したりすることが可能です。
§ ストリーミング表示:待ち時間を感じさせない
AIが長い回答を生成する場合、ユーザーは「固まっているのでは?」と不安になりがちです。
Chatflowのストリーミング表示機能を使えば、AIが回答を生成している途中から、文字が順番に画面に表示されます。これにより、体感的な待ち時間が大幅に短縮され、ユーザー体験が向上します。
ChatGPTやClaudeを使ったことがある方なら、文字が流れるように表示される体験をご存知でしょう。Chatflowでも同様の表現が可能です。
§ インタラクティブフォーム:高度なUI表現
Chatflowでは、MarkdownやHTMLのサポートにより、リンクや簡易的なインターフェースを表示して外部システムへ誘導することも可能です。
例えば、予約システムのボットで「予約フォーム」へのリンクを表示したり、高度なカスタマイズを行うことでチャット画面内に簡易入力欄を表示したりできます。
※標準機能以上のリッチなフォーム実装やデータ送信には、HTML/JavaScriptの知識や外部連携の工夫が必要になる場合があります。
§ 5. 会話フローの設計パターン ─ よくある型
実際の業務でChatflowを設計する際、いくつかの「型」を知っておくと効率的です。
§ Q&Aパターン:質問→検索→回答
社内FAQボットなどで最もよく使われるパターンです。
- ユーザーが質問を入力
- Chatflowが社内ナレッジベースを検索(RAG連携)
- 関連情報をもとに回答を生成
DifyのRAG機能(ナレッジベース)と組み合わせることで、社内マニュアルやドキュメントをAIの「知識」として活用できます。
§ ガイドパターン:段階的なヒアリング→提案
カスタマーサポートや商品提案で効果的なパターンです。
- ユーザーの状況や希望を段階的にヒアリング(会話変数に保存)
- 収集した情報をもとに、最適な提案を生成
- 必要に応じて、条件を変更して再提案
このパターンでは、会話変数を活用して「これまでに聞いた情報」を蓄積することがポイントです。
§ エスカレーションパターン:人間への引き継ぎ
AIがすべてを解決できるわけではありません。以下のような場合に、人間のオペレーターに引き継ぐ設計も重要です:
- AIが「わかりません」と判断した場合
- ユーザーが「人間と話したい」と希望した場合
- 特定のキーワード(例:「クレーム」「返金」)が含まれる場合
条件分岐ノードを使って、これらの状況を検知し、有人対応への切り替えメッセージを表示できます。
§ 6. 導入に向けた実装ガイド
§ Phase 1:シンプルなQ&Aから始める
最初から複雑なフローを構築する必要はありません。まずは「よくある質問に答える」シンプルなChatflowから始めることをお勧めします。
具体的には:
- 3〜5つの頻出質問を用意
- 各質問に対応するナレッジベースを登録
- 基本的なQ&Aフローを構築
この段階で「AIに任せられること」と「人間が対応すべきこと」の境界線が見えてきます。
§ Phase 2:会話変数で文脈を強化
基本的なQ&Aが機能したら、会話変数を導入して文脈管理を強化します。
- ユーザーの名前や属性を記憶
- 過去の質問履歴を踏まえた回答
- 「さっきのアレ」でも通じる対話
§ Phase 3:業務フローへの統合
成熟したら、既存の業務システムとの連携を検討します。
- 予約システムへの自動登録
- CRMへの問い合わせ記録
- エスカレーション時の担当者通知
DifyのAPI連携機能を使えば、外部システムとの接続もコーディングなしで実現できます。
§ 7. 投資対効果の考え方
§ 短期的な効果(導入直後〜3ヶ月)
- よくある質問への対応時間の削減
- 24時間対応による顧客満足度向上
- オペレーターの負担軽減
§ 中期的な効果(3ヶ月〜1年)
- 対話ログの蓄積によるFAQの改善
- エスカレーション率の低下
- 新人教育コストの削減
§ 長期的な効果(1年以上)
- 顧客の声をデータとして活用
- 予測的なサービス改善への発展
- 人間のスタッフがより創造的な業務に集中
重要なのは、AIと人間の役割分担を明確にすることです。AIにすべてを任せるのではなく、AIが得意な「パターン化された対応」を担当し、人間は「判断が必要な対応」に集中する設計が効果的です。
§ 8. 導入時の注意点
§ プライバシーへの配慮
会話には個人情報が含まれる可能性があります。以下の点に注意してください:
- 会話ログの保存期間と管理方法
- 個人情報の取り扱いに関するユーザーへの説明
- 必要に応じた匿名化処理
Difyはオンプレミス(自社サーバー)での運用も可能なため、機密性の高い環境でも安心して導入できます。
§ スタッフの理解と協力
AIチャットボットの導入は、スタッフの不安を招くこともあります。「自分の仕事がなくなるのでは」という懸念です。
重要なのは、**AIは「人間を置き換える」のではなく「支援する」**という位置づけを明確にすることです。単純な問い合わせ対応から解放されることで、より高度な業務や人間関係の構築に時間を使えるようになります。
§ 「人間らしさ」の維持
AIが流暢に回答できるようになると、ユーザーが「本当に話を聞いてもらえているのか」と疑問を持つこともあります。
適切なタイミングで「人間が対応できること」を伝えたり、回答の最後に「他にご質問があればお気軽にどうぞ」と付け加えたりするなど、機械的になりすぎない工夫が大切です。
§ よくある質問
§ Q1. Chatflowは社内の既存システムと連携できますか?
はい、DifyのAPI連携機能を使って、CRM、予約システム、社内データベースなど多くのシステムと連携可能です。ノーコードで設定できるため、専門的な開発スキルは必要ありません。
§ Q2. 会話のログはどのように管理されますか?
Difyでは会話ログがプラットフォーム上に保存され、管理画面から確認・エクスポートできます。オンプレミス運用の場合、データは自社サーバー内に保持されるため、外部への送信を完全に防ぐことが可能です。
§ Q3. マルチターン対話でAIが混乱することはありませんか?
適切なメモリ設定と会話変数の活用により、混乱を防ぐことができます。Windowサイズの調整や、重要な情報を会話変数に保存する設計がポイントです。
§ Q4. 導入にはどのくらいの期間がかかりますか?
シンプルなQ&Aボットであれば数日〜1週間程度で構築可能です。業務システムとの連携や複雑なフローを含む場合は、要件定義から含めて1〜3ヶ月程度が目安となります。
§ Q5. ChatflowとWorkflowはどう使い分けますか?
ユーザーとの対話が必要な場合はChatflow、バックグラウンドで処理を実行する場合はWorkflowが適しています。例えば、チャットボットはChatflow、定期的なレポート生成はWorkflowという使い分けが一般的です。
§ まとめ
-
Chatflowの本質は「記憶」:会話変数とメモリ機能により、前回の文脈を踏まえた自然な対話が可能になります。
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マルチターン対話はsys.dialogue_countで設計:対話の段階に応じた処理を条件分岐で実現し、会話の「流れ」を設計できます。
-
Answer ノードとストリーミング表示でUX向上:途中経過の表示やインタラクティブフォームで、ユーザー体験を改善できます。
AIチャットボットの導入は、単なる業務効率化だけでなく、顧客との新しいコミュニケーション手段を生み出す機会でもあります。Chatflowを活用して、「記憶を持つ対話」から始めてみませんか?
会話の仕組みは分かった。では、社内の資料をAIの「知識」にする方法は?
次の記事では、Difyの「RAG機能」─ ナレッジベースの作成と検索戦略を解説します。社内マニュアルやFAQをAIに学習させ、より精度の高い回答を実現する方法をお伝えします。
Data Insightでは、Difyの導入から社内データの連携、対話フローの設計までを一貫して支援しています。自社に合った活用方法を知りたい方は、ぜひ無料相談をご利用ください。
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