マーケティング(メディア)・ミックス・モデリングはビジネスにおいて重要な役割を果たします。この記事では、その重要性とビジネスへの具体的な影響について詳しく解説します。
はじめに
マーケティングにおいてデータサイエンスを駆使することがビジネスで成功する鍵となります。しかし、広告やプロモーションの成果を正確に測定し、それを基にした賢明な意思決定を行うことは、多くの企業にとって依然として課題であるのが現実です。特にCookieの規制もあり、マーケティング(メディア)・ミックス・モデリング(MMM)が再注目されています。
MMMは、広告キャンペーンやマーケティング戦略全体の効果を測定し、その成果を最大化するための強力なツールです。過去のデータを分析し、どのマーケティング活動が最も効果的であったか、また将来の戦略にどのような調整が必要かを理解するのに役立ちます。
経営者やマーケティング担当者の困り事
少し抽象的ですが、
- 市場での課題: 競争が激化する中で、自社のマーケティング投資が最大の効果を発揮していないと感じることが多い
- データの活用: 大量のデータを収集しているものの、それをビジネス成果にどのように結びつけるかわからない
- ROIの最適化: 広告やプロモーションのROI(投資収益率)を最大化したいが、どのチャネルにどれだけ予算を割り当てればいいのか分からない
- 戦略的意思決定: データを基にした戦略的意思決定を行いたいが、適切な分析手法やツールの選択に迷っている
- 変化する消費者の行動: デジタル化の進展により、消費者の行動が急速に変化している中で、マーケティング戦略をどう適応させれば良いかの不安。
といった、悩みはますます増えているように感じています。
Crisp-DMとは
そこで、データ分析の有名なプロセスであるCrisp-DMを用いて、MMMの進め方を説明します。
まず、「Crisp-DMとは」を簡単に説明します。
CRISP-DMは「Cross Industry Standard Process for Data Mining」の略で、データマイニングやデータサイエンスプロジェクトを実行するための標準的なプロセスモデルです。1990年代後半に提案され、ビジネス理解、データ理解、データ準備、モデリング、評価、デプロイメントの6つのフェーズで構成されています。これらのフェーズは線形に進む必要はなく、プロジェクトのニーズに応じて繰り返しや逆戻りが可能です。
MMMの進め方
では、MMMの進め方をCRISP-DMのプロセスに則ると以下のような感じです。
- ビジネス問題の理解
- 関係者間でビジネスの目的とプロジェクトのゴール(KGIやKPI)を明確に設定し、期待される成果について合意を形成します。
- つまり、MMMによって何を最大にしたいか?それをどう見たいか?(地域別、層別など)という問いに答えると良いです。
- また、この際、SWOT分析やビジネスモデルキャンバスなどを用いて、ビジネスを可視化しながら、進めることをお勧めします。
- データ理解
- 前のステップで決めたKPIに対して、その原因となるデータを収集できるかを明確にします
- 例えば、オンライン広告への支出額(GDN、Meta等)、メルマガ配信・SNS投稿といったデジタルで比較的収集しやすい情報から、お店の天気や通行者数などの外部要因情報を網羅的に洗い出します。
- データ準備
- 洗い出したデータの相関関係のチェックやモデル化するにあたっての前処理を行います
- データによっては、日次でとれるものもあれば週次でないととれないデータもあるので、単位を合わせましょう。
- モデリング
- 有名なアルゴリズムには、GoogleのLightweightMMM、MetaのRobynや、PyMCのPyMC Marketingがあります。LightweightMMMとPyMC MarketingはベイジアンMMMです。
- モデルをつくったらROIの計算や広告チャネルごとの最適化シミュレーションを行います
- 評価
- シミュレーション結果を解釈して、適切な予算配分でビジネスに適用をPoC通じて確認しましょう。
- モデルはあくまでモデルです。実ビジネスの環境と乖離していた場合は説明変数となるデータが足りていなかったりするので、初めのステップから再検討しましょう
- 展開・共有
- PoCの結果が想定通りであれば、運用方針を決めていきます。インプットデータを効率よく自動で収集する方法の検討や、モデルは陳腐化していくので再学習する頻度を予め決めておくとよいです。
- 共有にあたっては、StreamKitなどをもちいてWeb化するのもおすすめです。
これまで全体像をみてきましたが、次回は各ステップを詳細に解説します。